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Business Data Analysis & Visualization with Excel

なぜふつうの移動平均(=後方)でなく中心化移動平均を使う?

はじめに

このページは移動平均法による季節調整 with Excelの補足です。移動平均はいろいろな場面で利用されますが,ここは季節調整についての話です。

Excelで偶数区間の中心化移動平均を求めるのは人によっては面倒に感じることもあろうかと思います。なら後方移動平均(ある時点より前の一定区間で平均をとる方法。たとえば姉妹サイトのこちらのページで使っている方法)で済ませられないかな…と思いたくもあるわけですが,以下これに関する比較です。

本題

Step 1先行記事

とはいえ,ここでの趣旨そのものと言いますか,すでに表題に係る中心化移動平均の特性に触れられた記事がwebにありました:中心化移動平均 [時系列解析 / 需要予測]―"Minkyのよもやま日記"。こちらの記事で例示されているように,後方移動平均と中心化移動平均とでは原系列との差の大きさで違いが出ます。

どのように差が出るか,とりわけ極端なシミュレーションと,移動平均法による季節調整 with Excel元データによるシミュレーションで確認したいと思います。

Step 2完全なサイクルを繰り返すもの

まず,こんなデータではどうでしょうか。5期で同じパターンを繰り返します。

後方移動平均と中心化移動平均をとってみると以下のようになります。なお,実測値にある縦棒は計算の対象範囲を示しています。

この場合,両移動平均は同じ値になりました。したがって実測値との差も同じです。計算結果だけを考えれば,こうした場合はどちらで計算してもよさ気です。

Step 3定数で上昇するもの

次は,こんなデータです。100ずつ上昇していきます。

同じく後方移動平均と中心化移動平均をとってみると……こちらは両者に差が出ました。これは当該期以降の値を情報として持つか持たないかゆえの差と言えます。

Step 4定数で下降するもの

もちろんこの差は定数で減少する場合も同じです。

Step 5元データで誤差を見る

これまでのようなキレイな推移を見せる原系列は現実的でないですので,移動平均法による季節調整 with Excelで引用したデータをもとに両移動平均による「差」を見てみたいと思います(ただし,ここで差とはABS[実測値-MA値]のこと)。初期データ69期のうち,後方移動平均と中心化移動平均ともに求めることができる区間は,第12期~第63期の52区間となります。

累積の差,最大値・最小値は次のとおりです。

Step 6結局のところ

ひとくちに差のとらえ方といえ相対的な見方もあります。また極論を言えばモノの見方は人それぞれかもしれません。ただ筆者に限れば,(このサイトでやっているような)いわゆる古いタイプの移動平均型の季節調整法とくれば,上述の結果に鑑みても,移動平均に「後方」を用いるのは,やはり季節調整の趣旨とはどこかズレてくるかな――と避ける選択をします。

本工程へ戻るには こちら からどうぞ。

時系列分析のできるExcelアドインソフト

  • エクセル統計 BellCurve
    • 「時系列分析・曲線のあてはめ」各手法(期別平均法・連環比率法・EPA法などが利用可能)