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ビジネスデータ分析ツールの作成 with Excel

Book Review, vol.2

『ビジネスで本当に使える 超 統計学』

Excel & Access 連携 実践ガイド ~仕事の現場で即使える

Title: ビジネスで本当に使える 超 統計学

Author: 村上知也・矢本成恒, 2014

Publisher: 秀和システム

簿記のメジャーなテキストのひとつ,いわゆる「猫本」にはじめて触れた時以来,私はストーリーで学びを追う本のもつ奇妙な魅力にとりつかれ,こと統計学の分野では名著「マンガで分かる統計学」を皮切りに,現在では書店に立ち寄ってそれっぽいのを見かけただけで,中身を覗くことなく買ってしまうような人間になっていることに気づきました(ネタバレこわい…)。

こうした類の本はいくら学びの本だからと言っても,「プロットも何もあったもんじゃない!」といったストーリーを並べて読み手がついてきてくれるでもなく,書き手の苦労も察するに余りあります。そんな中でも,本書『ビジネスで本当に使える 超 統計学』は,一連のストーリー物を限られた頁数の中でかたちにするための,お手本とも言えるような秀逸な構成となっていました。

統子は、朝起きた時に、部屋中にただよう醤油の匂いが好きだった。それもそのはずで、統子が生まれた年に、ラーメン「夢楽」は開店した。そして統子は20年間「夢楽」の2階で暮らしている。

―――と,地の文から始まる本書は,著者さんのストーリーに掛ける想いが決して小さくはないことを期待させるものとなっています。

さて,本書における物語は,主人公の統子と,統子の父親でラーメン店「夢楽」大将の文吉との掛け合いにおいてすすめられます。

統子は家業を手伝いながら統計学を学ぶ大学生にすぎないのですが,やりがちな “数字をツールに通してドヤるだけで解釈の妥当性には関心なし!” といったヤンチャを見せることもありません。口調も絡め,思わず「精神年齢高すぎいぃぃぃぃぃぃーっ!」と何度ツッコんだか忘れてしまうくらい,若くして常識人です。…もっとも,最後も最後,PDCAのくだりに至ってはじめて,ある意味で経験豊かな父親相手に脈略もなく急にドヤりだすようなかわいさをようやく見せてもらえますがw

パパの文吉は,それこそ巷のラーメン店店主としてステレオタイプな職人気質を持っています。次々と襲い掛かる苦難にあっても基本的に楽観主義な人ですが,心にはどこか不安も抱えているようで,統子の助言に関してはよき相棒としての聞く耳も持っています。

…こうしたふたりのやることなすことなので,本書にはいわゆる “シリアス展開” といったものになる芽がありません。現実の鏡のような重い展開が苦手な方でも安心して読むことのできるような内容になっています。余談ですが,前述の猫本は,仕分けの必要上途中からなかなかのシリアス展開がくることが予想できるので、そわそわした記憶があります。

はたして上述のようなストーリーに関することがらばかりに触れたとなると,学習本としての本書がダメな感じに誤解を生みかねないので加えますが,学びのための本として,本書が筋を押さえた良い本であることは強調しておきます。ただし,話中の人物の思考のフローとの関連において実践を交え,過程を追体験しながら知識を定着させる―――といった点こそに,著者さんが狙ってリソースを注いだ形跡をそこかしこに感じたことを踏まえて評せば,どちらかといえば手続き論に軸足を据えたハウツーの解説書といった方が適切かもしれません。

その意味で読了して思うのは,内容とタイトルとの間には,本書の場合少しの齟齬を挟むかな,といったところでしょうか。

いずれにしろ,読み物として,手続き論の解説書として充実した内容の本書は,すでにテキストなどを通じて統計学の初歩をかじったことのある方が,「データ分析」といった抽象を,自身のものとして塑造していくためのとっかかりとして,少なくない示唆を与えてくれるものだと思います。

最後に,本書は「ビジネス統計スペシャリスト試験」の公式サイトで,学習のための参考書籍として掲載されています。そちらで,“操作編” としてカテゴライズされていることに鑑みても,やはり,身近な実践に興味を持ち始めた方にこそおすすめできる本ではないかと思います。

Excel & Access 連携 実践ガイド ~仕事の現場で即使える

ビジネスで本当に使える 超 統計学

村上知也・矢本成恒

秀和システム

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